愛犬の健康を守るうえで、毎日の食事はとても大切です。「何を食べさせればいいの?」「栄養バランスはどう整えればいい?」など、愛犬の食事に悩む人は多いです。愛犬が元気に長生きするためには、適切な食事管理が欠かせません。本記事では、犬の食事に関する基本知識から安全な食材、避けるべき危険な食材まで解説します。
記事を読めば、愛犬の健康を守るために知っておきたい栄養バランスの基礎知識や、食事選びのポイントがわかります。愛犬の健康を支える“ごはん選び”に役立ててくださいね。
犬の食事の基礎知識

犬の健康を支えるには、5大栄養素をバランスよく摂ることが重要です。犬の年齢や体重、活動量に応じて食事を調整し、健康的な毎日と長寿をサポートしましょう。
犬に必要な5大栄養素
5大栄養素は、犬の体のさまざまな機能を支える役割を果たします。以下の5つの栄養素は、どれも欠かせない大切な栄養素です。
- タンパク質
- 脂質
- 炭水化物
- ビタミン
- ミネラル
タンパク質、脂質、炭水化物はエネルギーを供給し、ビタミン、ミネラルは代謝を助ける働きがあります。
タンパク質は、犬の筋肉や臓器の形成、修復に欠かせません。良質なタンパク質を十分に摂取すると、健康維持につながります。脂質は、犬の皮膚や被毛の健康維持のために重要です。炭水化物は、脳や筋肉のエネルギー源として利用され、腸内環境の維持にも役立ちます。犬は人間ほど多くの炭水化物を必要としないため、適量を与えましょう。
ビタミンは、犬の体内での代謝や免疫機能の調整に必要な栄養素です。ミネラルは、犬の骨や歯の形成、体液のバランス維持に使われます。カルシウムや鉄分などのミネラルも適切に摂取させましょう。5大栄養素をバランスよく摂取することで、元気な体を保てます。
栄養素は「多ければいい」わけではありません。年齢・体格・運動量に合った量で与えることが重要です。
栄養素の必要量
犬の健康を維持するには、栄養素を適切な量で与えましょう。成犬が1日に必要な栄養素の目安量は以下です。
- タンパク質:体重1kgあたり 3.4g
- 脂質:総カロリーの10〜20%
- 炭水化物:総カロリーの20〜50%(与えすぎ注意)
ビタミンはAやD、E、K、B群などをバランスよく摂取させましょう。ミネラルは、カルシウムやリン、マグネシウム、ナトリウム、カリウムなどを適量与えるのがおすすめです。水分も忘れてはいけません。体重1kg当たり1日50〜70mlの水分が必要です。食物繊維は乾物量あたり2〜5%を摂取させましょう。
ペットフードの栄養基準を定めている世界的な団体「AAFCO(全米飼料検査官協会)」によれば、成犬用フードの場合、水分を除いた乾物換算で最低18%、または1,000kcalあたり45gのタンパク質が必要とされています。また、成長期や繁殖期(子犬や妊娠・授乳中の母犬)のフードでは、乾物換算で最低22.5%、もしくは1,000kcalあたり56.3gのタンパク質が推奨されています。(参照:merck veterinary manual)
このAAFCOの基準をもとに計算すると、成犬のタンパク質必要量は体重1kgあたり約3.4gが目安となります(例:体重5kgの成犬が1日に約374kcalを必要とする場合、374kcal × 0.045g = 約17g、17g ÷ 5kg = 約3.4g)
1日に必要なエネルギー量(DER)は、体重と活動量によって異なります。基本的な計算式は以下の通りです。
DER = 70 ×(体重)0.75 × 活動係数
活動係数は避妊・去勢済みの成犬で「1.6」、未避妊・未去勢の成犬で「1.8」、シニア犬では「1.2〜1.4」程度が目安です。
例:体重5kgの避妊・去勢済み成犬の場合、1日に必要なエネルギー量(DER)は
70×(5)0.75 ×1.6=234kcal×1.6=374kcal/日
約374kcal/日が適正なエネルギー量になります。
犬に安全な食事

安全な食事は、愛犬の健康と幸せな生活を支えるうえで欠かせません。適切な栄養バランスを保ちつつ、以下のような安全な食材を選ぶと犬の健康を維持できます。
- 鶏肉・牛肉・ラム肉
- サーモン・白身魚
- かぼちゃ・にんじん・さつまいも
鶏肉・牛肉・ラム肉
鶏肉や牛肉、ラム肉は、良質なタンパク質源です。消化しやすくアレルギーの可能性も低いため、多くの犬に安心して与えられます。鶏肉は低脂肪で高タンパクな食材です。牛肉は鉄分が豊富で栄養価が高いため、貧血気味の犬や成長期の子犬に適しています。ラム肉に含まれる必須脂肪酸は、皮膚や被毛の健康維持に役立ちます。
肉を与える際は、生肉を避け、脂肪分の多い部位は控えめにしましょう。骨付き肉は誤飲の危険があるため、与えないようにしてください。タンパク質源を定期的にローテーションすると、特定の食材へのアレルギー発症リスクを軽減できます。愛犬の体調や好みに合わせて調整すれば、バランスの取れた食事を提供できます。
サーモン・白身魚

サーモンと白身魚は、犬の食事に適した食材です。サーモンには、良質なタンパク質とオメガ3脂肪酸が豊富に含まれます。白身魚は、低脂肪で消化しやすいタンパク質源です。魚を与えると、犬の皮膚と毛並みの健康維持に役立ちます。魚を与える際には、以下の点に注意が必要です。
- 骨をしっかり取り除く
- 加熱してから与える
- 調味料不使用
- アレルギーに注意する
生魚は避け、加熱調理したものを与えましょう。塩分や調味料は加えないでください。アレルギーの可能性があるため、少量から始めることが大切です。缶詰や冷凍の魚も、適切に調理すれば安全に与えられます。週に1〜2回程度の頻度で与えましょう。
かぼちゃ・にんじん・さつまいも
かぼちゃやにんじん、さつまいもは、犬の健康に役立つ野菜です。以下の栄養素が豊富に含まれています。
- かぼちゃ:ビタミンA・ビタミンC
- にんじん:ベータカロテン・ビタミンA・食物繊維
- さつまいも:食物繊維・ビタミンC・ビタミンB6
上記の栄養素は、消化を助けたり、便秘を予防したりする効果があります。抗酸化作用があり、免疫機能を強化する助けとしても有効です。目や皮膚の健康維持にも役立ちます。必ず茹でるか蒸すなど、柔らかく調理してから与えてください。小さく切ると、消化しやすくなります。野菜は低カロリーなので、ダイエット中の犬にも適しています。
量は控えめにし、全体の食事量の10%程度にとどめましょう。初めて与える場合は、アレルギーの可能性があるため、少量から始めてください。様子を見ながら、徐々に量を増やしていくのがおすすめです。生で与えるのは避け、必ず調理してから与えましょう。
犬に危険な食事

犬に危険な食事について知ることは、愛犬の健康を守るために重要です。人にとっては身近な食べ物でも、犬にとっては危険なものもあります。
特に知っておきたい危険な食べ物は以下のとおりです。
- チョコレート
- 玉ねぎ・ニンニク
- ぶどう・レーズン
少量でも中毒や命に関わることがあるため注意が必要です。犬の体内で毒性を持つ食材もあり、摂取すると重篤な症状を引き起こす可能性があります。
チョコレート
チョコレートは犬にとって危険な食べ物なため、与えてはいけません。チョコレートに含まれるテオブロミン成分が、犬の体に以下のような悪影響を及ぼします。
- 嘔吐
- 下痢
- 興奮
- けいれん
- 不整脈
ダークチョコレートは危険度が高いため、特に注意してください。ホワイトチョコレートは比較的安全ですが、与えるべきではありません。誤って犬がチョコレートを食べてしまった場合は、すぐに獣医師に相談しましょう。
玉ねぎ・ニンニク

玉ねぎとニンニクは、犬にとって危険な食べ物です。チオ硫酸アリルという成分が含まれており、犬の赤血球を破壊します。玉ねぎやニンニクを食べてしまうと、貧血や溶血性貧血を引き起こす可能性があります。少量でも犬の健康に悪影響を及ぼすため、注意してください。加熱したものも与えてはいけません。
犬が誤って食べてしまった場合、下記のような症状が現れる場合があります。
- 嘔吐
- 下痢
- 食欲不振
- 倦怠感
- 呼吸困難
玉ねぎやニンニクの煮汁も与えてはいけません。すき焼きや牛丼などの料理は、玉ねぎを取り除いても有害な成分が煮汁に含まれるため中毒を起こす可能性があります。
玉ねぎパウダーやニンニクパウダーも、同様に危険なので避けましょう。誤って食べてしまった場合は、速やかに獣医師に相談してください。リーキ(ポロネギ、西洋ネギ)やニラ、ネギなども危険なため、注意が必要です。食品の原材料表示もよく確認し、危険な成分が含まれていないかチェックしてください。
ぶどう・レーズン
ぶどうとレーズンは、犬にとって危険な食べ物です。犬がぶどうやレーズンを食べると、急性腎不全を引き起こす可能性があります。誤って食べてしまうと、嘔吐や下痢、腹痛、食欲不振、尿量減少などの症状を引き起こします。少量でも危険なため、絶対に避けてください。
ドライフルーツや、グラノーラバーにも注意が必要です。家族全員にぶどう・レーズンの危険性を伝えましょう。犬の手の届かない場所に保管し、落ちたぶどうやレーズンはすぐに拾ってください。誤って食べてしまった場合は、速やかに獣医師に相談しましょう。
犬に食事を与える際のポイント

犬の健康的な生活には、適切な食事が重要です。犬に食事を与える際のポイントは以下のとおりです。
- 栄養バランスを考える
- 適切にカロリーを調整する
- 新鮮な水を与える
栄養バランスを考える
犬の健康を維持するためには、栄養バランスの取れた食事が欠かせません。バランスの良い食事は、犬の健康と長寿に大きく影響します。栄養バランスを考える際には、タンパク質や炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルをバランスよく含めましょう。
高品質なタンパク質は、犬の健康維持に重要です。鶏肉や魚などの良質なタンパク質源を中心に、食事を組み立ててください。過剰な添加物や保存料は避けましょう。消化しやすい食材を選び、アレルギーの原因となる食材は避ける工夫が大切です。
必要に応じて、サプリメントも検討してください。サプリメントを与える際には、事前に獣医師に相談しましょう。適切な栄養バランスは、犬の個体差や生活環境によっても変わります。定期的に獣医師に相談し、調整をおすすめします。
適切にカロリーを調整する

適切なカロリー調整は、犬の健康維持に欠かせません。犬の年齢や体重、活動レベルに応じてカロリー摂取量を調整してください。肥満を防ぐためには、適切な量の食事が大切です。定期的に犬の体重をチェックし、体型や健康状態に応じて食事量を調整しましょう。以下の点にも注意が必要です。
- おやつの量:全体のカロリー摂取量の10%以内
- 運動量の増減
- 高齢犬や避妊・去勢後の代謝の低下
おやつは、全体のカロリー摂取量の10%以内に抑えてください。運動量が増えた場合は、カロリー摂取量を増やす必要があります。高齢犬や避妊・去勢後は代謝が落ちるため、カロリーを控えめにすることが大切です。食事回数を分割して与えると、消化の負担が減ります。
果物や野菜をカロリー摂取量の計算から除外してしまう方がいます。果物や野菜など「おやつ」として販売されていない食品も、間食として与える場合は「おやつ」としてカロリー摂取量を調整しましょう。
体重変化や便の状態を観察し、必要に応じて調整することも重要です。個々の犬に適したカロリー摂取量は、獣医師に相談して決めてください。専門家のアドバイスを受けると、愛犬の健康を長く維持できます。
新鮮な水を与える
新鮮な水を犬に与えることは、健康維持のために大切です。犬の体重1kg当たり60ml程度を目安に与えてください。新鮮な水を確保するためには、以下のポイントに気を付けましょう。
- 水の取り換え
- 清潔な給水器
- 複数の設置場所
1日1〜2回は水を取り換えてください。清潔な給水器を使用し、複数の場所に水を置くことが重要です。外出時も水分補給は欠かせません。携帯用の給水器を用意し、こまめに水を与えましょう。水の温度は、室温程度が理想的です。暑い日や運動後は、少し冷やした水を与えるのも良いですが、冷水は避けてください。
犬の水の飲み方をよく観察し、普段と異なる飲み方をしている場合は、獣医師に相談しましょう。
特別なニーズに応じた犬の食事のポイント

以下のような特別なニーズを持つ犬には、個別の食事管理が重要です。
- アレルギーを持つ犬
- 肥満傾向のある犬
- 高齢犬
健康状態や年齢に応じて、工夫して栄養を摂取させましょう。
アレルギーを持つ犬
アレルギーを持つ犬の場合には、アレルゲンを特定し、除去することが重要です。獣医師と相談しながら、単一タンパク質源のフードや新しいタンパク質源を試してください。鹿肉やウサギ肉などの珍しい肉類が、効果的な場合もあります。以下の工夫もおすすめです。
- 加水分解タンパク質含有フード
- グレインフリーフード(穀物不使用フード)
- 人工添加物・保存料回避
- 手作り食
オメガ3脂肪酸を補給して皮膚の健康をサポートしたり、プロバイオティクスを与えたりして腸内環境を整えたりしましょう。定期的なアレルギー検査と症状の観察も、忘れてはいけません。食事の記録を付け、症状との関連を把握すると、より効果的に対策ができます。
肥満傾向のある犬

肥満傾向のある犬には、カロリー制限された特別食を与えましょう。低脂肪・高繊維の食事を選ぶと、犬の満腹感を保ちながらカロリー摂取量を抑えられます。具体的な対策は、以下のとおりです。
- 食事量の管理
- 定期的な体重測定
- 運動量の増加
- おやつの制限
食事回数を分割して与えると、犬の代謝を上げ、体重管理に役立ちます。獣医師と相談しながら、食事プランを立てましょう。ゆっくり食べさせる工夫をすると、犬の満腹感を高められます。
高齢犬
高齢犬の場合には、消化しやすい食事を心がけましょう。消化器官の機能が低下している場合があるため、胃腸への負担を軽減する必要があります。水分摂取が不足しがちになるため、新鮮な水を常に用意し、こまめに水分補給を促すことが大切です。食事の回数や量も考慮してください。
少量の食事を複数回与えたり、個々の健康状態に合わせてカロリー制限に注意するのがおすすめです。歯の健康にも配慮しましょう。柔らかく歯に優しい形状の食事を選ぶと、高齢犬の食事をサポートできます。
おすすめのドッグフードの選び方

ドッグフードを選ぶ際には、以下を参考に選ぶのがおすすめです。
- 総合栄養食を選ぶ
- 成分表示をチェックする
- ライフステージに合わせる
- 犬のサイズに合わせる
総合栄養食を選ぶ
「総合栄養食」と記載されたドッグフードは、犬が必要としている栄養素をすべて含んだフードです。新鮮な水と一緒に与えるだけで健康を維持することができるように、栄養バランスが調整されています。
犬が健康を維持するために必要な栄養素をバランスよく含んでいます。主食として与える場合は必ずこの表示があるものを選びましょう。
成分表示をチェックする
成分表示では、タンパク質源が最初に記載されているかを確認してください。良質なドッグフードは、肉や魚の名前が明記されています。肉や魚の粉末ではなく「チキン」や「サーモン」などの表記があるものを選びましょう。人工保存料や、着色料が含まれていないか確認してください。
添加物は犬の健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、避けるのが賢明です。穀物が主原料になっていないかも確認しましょう。犬は肉食動物なので、タンパク質を中心とした食事が適しています。原材料の産地や、製造国も確認し、安全性の高い国で製造されているものを選びましょう。
アレルギーの心配がある場合は、アレルゲンとなる可能性のある成分が含まれていないかも確認してください。
ライフステージに合わせる

成長段階によって必要な栄養バランスが異なるため、犬の年齢に合ったフードを与えることが大切です。子犬用は高タンパク・高カロリーのフードが適しています。成犬用は適度なタンパク質と脂肪を含むフード、シニア犬用は低カロリーで消化しやすいフードが最適です。シニア犬専用フードは、カロリーを抑えながら栄養素をしっかり摂れるよう設計されています。
妊娠中や授乳中の犬には、特別な栄養補給が必要です。ライフステージに合わせたフードの切り替えは、適切なタイミングで行いましょう。急激な変更は消化器系に負担をかける可能性があるため、徐々に新しいフードの量を増やしてください。
犬のサイズに合わせる
小型犬や中型犬、大型犬など体の大きさに適したフードを選ぶことで、より効果的に栄養を摂取できます。小型犬の場合は、小さな口に合わせて小さな粒のフードを選びましょう。大型犬には大きな粒のフードが適しています。犬種によって、必要な栄養素が異なる点も考慮してください。以下の点に注意が必要です。
- 活動量に応じたカロリー調整
- 年齢や健康状態の考慮
- 適切な給餌量
大型犬の場合は、関節サポート成分入りのフードを検討してください。大型犬は関節への負担が大きいため、グルコサミンやコンドロイチンなどの成分が含まれたフードがおすすめです。小型犬の場合は、歯垢の付着を防ぐ成分が含まれたフードや、かむ回数を増やす工夫がされたフードが最適です。
まとめ

犬の食事管理は、愛犬の健康と幸せな生活を支えるための基本です。犬の健康を維持するためには、バランスの取れた栄養摂取が重要です。特にタンパク質や脂質の摂取量は、犬のライフステージや活動量に応じて調整する必要があります。具体的な摂取量や食事内容については、獣医師と相談の上で決定することをお勧めします。安全な食材を選び、危険な食材を避けてください。適切なカロリー調整と新鮮な水も忘れてはいけません。
特別な配慮が必要な犬には、状況に応じた食事管理が必要です。正しい食事管理は、愛犬との楽しい時間を長く過ごすための基礎となります。愛犬の一生を、毎日の食事でサポートしていきましょう。